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電通の一流コピーライターに学ぶ「自分の考えを言葉にするたった一つの思考法」

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「文字には不思議な力があります。」  

これは仲間由紀恵が主演を務めるドラマ「TRICK」にて、主人公の母親が登場するたびに喋るおきまりのセリフだが、これは事実だ。そして現代は言葉で評価される時代である。

amazonやメルカリ、食べログでは物や商品が、消費者の言葉であるレビューによって評価され、言葉の持つ影響力は今さらに大きくなっている。

私たちは言葉を用いて、自分の考えや、自分自身を知ってもらう。就活、プレゼン、また奨学金の申請書やバイトの面接、自分のやってきたことや、自分がどんな人物であるかを言葉で相手に伝える。

そういった場面で、伝えたいことがぼんやりあるのに、思っていたことがうまく言葉にできず、相手に伝わらなかったりした経験は、誰にも一度はあると思う。

しかし、人はもしうまく伝わっていない時には、「言葉遣いが下手だな」「もっとうまく言えばいいのに」といった言葉づかいを評価するのではなく、「言いたいことが薄っぺらだな」「深く考えられていないな」というように、それは相手の人格に対する評価をする。

つまり人間は、相手に言葉に宿る重さや軽さ、深さや朝さを通じて、その人の人間性そのものを、無意識のうちに評価してしまうこととなる。

ぼくが最近までインターンしていた会社では、メンターの方に僕が書く文章についてかなり指導された。確かに僕の文章力は酷いことは過去のブログを見ればわかるだろう。しかし、僕が書く文章には難があるというレッテルを貼られ、そこまで言うか?というぐらい、とても厳しく指摘をもらった。

いまではそれだけ厳しくしてもらった意味がわかる気がする。人は文章や何をしゃべるか、つまり言葉で人を判断し、それが薄っぺらであれば、それは人からの信用さえも失うのだ。言葉にできるとは、つまり何かを理解していることであり、言葉にできないと言うことは、考えていないことと同じである。

そこで今回、自分の考えを言葉にする力をどのように身につけるかについて参考になったのが、電通のトップコピーライター・梅田悟司さんの著書『「言葉にできる」は武器になる。』である。

筆者である梅田さんは電通に10年以上勤め、カンヌライオンズ、グッドデザイン賞、観光庁長官表彰など国内外30以上の賞を受け、有名なコピーライティングに、ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」「この国を、支えるひとを支えたい。」、タウンワーク「その経験は味方だ。」「バイトするなら、タウンワーク」などがある。

現在、多くの人がうまく喋るコツやたスキルに頼っているが、それでは本当の力はつかない。本当に大切なのは小手先のテクニックではなく、自分の意見であり、本書で何度も出てくる『内なる言葉』に気づき、これを磨くことだと、筆者は本書で主張している。

ぼくは、言葉の重要性を再確認し、それをどう磨くかについて書かれた本書に大変感銘を受けた。実績あるコピーライターの経験を学び、自分の考えを言葉にする手段を学ぶことは、今後大きな財産となるだろう。

  1. 内なる言葉に向き合う
  2. 考えを言葉にする「思考サイクル」 
  3. 言葉にするプロセス

本書は、この3つで構成されており、今回は特に上2つについて紹介する。今回は書評ではなく、要約のため、具体的な方法論の説明についてまとめた「2.思考を磨く方法」は特に分量が多い。これをぼくが実践した結果が、最後に書かれているため、忙しい人は2章目を飛ばしてもいいかもしれない。

内なる言葉に向き合う

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内なる言葉

筆者は本書で、多くの人がうまく喋るコツやたスキルに頼っているが、それでは本当の力はつかない。本当に大切なのは小手先のテクニックではなく、自分の意見であり、本書で何度も出てくる『内なる言葉』に気づき、これを磨くことだと主張している。

言葉が意見を伝える道具なのであれば、まず意見を育てる必要がある。つまり、言葉というのは思考の上澄みにすぎず、いくら小手先のテクニックを学んだからといって意味がない。大事なのは自分の考えである意見を育てるべきだということだ。

筆者は10年のコピーライターのキャリアで、本書のキーワードとなる「内なる言葉」の存在に気づき、あらゆる局面でコミュニケーションが変わったといっている。

言葉には2つの種類がある

言葉には2つの種類がある。それは「外に向かう言葉」と「内なる言葉」である。そして、多くの人がスキルに頼り、外に向かう言葉しか意識できていない。

言葉が意見を伝える道具であるならば、まず、意見を育てる必要がある。

この前提に立つと、言葉を生み出すプロセスには、①意見を育てる、②意見を言葉に変換する、という2段階が存在することに気づく。

この2つを比べた時に意見を言葉に変換する方がイメージしやすく、効果があるように感じられる。しかし、そもそも自分に意見がなければ、何を言葉にするのだろうか。これこそが、咄嗟に思いついたことを口にすることや、相手の言葉に反応するように返事することしかできず、その結果として不理解や誤解による「この人は何も考えていないな」という一方的なレッテルが生まれてしまうと筆者は主張する。 

では、意見を育てるとはどういうことで、それはどうすれば可能なのだろうか。その重要な役割を担っているのが、「内なる言葉」である。人は、考えが浮かぶ時、言葉で疑問を持ち、言葉で考え、言葉で納得できる答えを導き出そうとしている。こうしたあらゆる「考える」という行為において、発せられることのない「内なる言葉」を用いている。

例えば、コーヒーが暑かった場合には、脳の中で「アツッ!」と言い、本を読んでいる際に納得することがあれば「確かに」と言い、休日何もせずにダラダラとしてしまったら、「1日を無駄にしちゃった」と言っている。

このように言葉を話す、聞く、入力するなどの具体的な行動を伴っていないとしても、頭の中で言葉を使っていることに変わりはない。

そして「考える=内なる言葉を発している」を意識できるようになると、「外に向かう言葉」の制度は飛躍的に向上する。なぜなら考えている時に使っていた内なる言葉をタネとして、外に向かう言葉を紡いでいけばいいからだ。

ここで、今までの

  1. 意見を育てる
  2. 意見を言葉に変換する

というプロセスは次のように定義することができる。

①「内なる言葉」で意見を育てる

物事を考えたり、感じたりする時に、無意識のうちに頭の中で発している言葉。それが内なる言葉である。あらゆる感情が頭に浮かぶ時には必ず、この内なる言葉を伴っている。

内なる言葉は外に向かう言葉の核になっているのだが、意識しなければ、その関係性に気づくことは難しい。

自分と対話するということは、内なる言葉を用いて考えを広めたり、深めたりすることと同義である。つまり、内なる言葉を用いて考えを広めたり、深めたりとすることと同義である。内なる言葉の語彙力が増えるほど、幅を広げ奥行きを持たせるほど、思考が進んでいる状態といえる。

②意見が変換された「外に向かう言葉」

外に向かう言葉とは、一般的に言葉と呼ばれているものである。

自分の意見や思いに言葉という形を与えたもので、主に他者とのコミュニケーションをとる役割を担っている。相手との接点となり、意思疎通を行う道具である。

内なる言葉と違い、情報を受け取る相手が存在している。投げかけることによって、相手が反応したり、自身が評価される言葉である。

言葉を磨くには?

言葉を磨く方法について、本書の第2部で思考サイクルについて筆者は説明する。しかし、なによりもまず「内なる言葉」の存在を認識することだけで、意見は格段に成長すると主張する。そのことを知っただけでも、今回大きな財産を得たと言ってもいいだろう。これは本書の以下のような例で説明される。

かの有名な浮世絵作家である歌川広重は「大はしあたけの夕立」という作品の中で、世界ではじめて歌を戦で表現したと言われている。それまで絵画において歌そのものは描かれることはなく、傘やレインコートを着ている人物や、水が溜まり濡れた地面を用いて、雨が降っている状況を描写していた。

しかし、本作品が発表されてからというもの、雨を線で描くという表現が一般的になっていった。つまり、歌川広重の作品によって「雨は線のように降っていたんだ」と気づき、認識するようになったのである。新しい表現手法が生まれただけではなく、新しい視点がもたらされたのだ。

現代を生きる私たちにとって、雨は線以外の何物でもないように感じているが、それまでは「雨が降っているな」と漠然としか捉えられていなかった。

内なる言葉の存在も同様である。その存在を一度認識することができれば、もう二度と見えなくなることはない。

 正しく考えを深める思考サイクル

第1章では内なる言葉に気づくことを学んだ。しかし、それだけではもったいない。第2章ではこの内なる言葉を磨くための具体的な方法を学ぶ。

結論から言えば、内なる言葉を磨く唯一の方法は、自分が今、内なる言葉を発しながら考えていることを強く意識した上で、頭に浮かんだ言葉を書き出し、書き出された言葉を軸にしながら、幅と奥行きを持たせることである。

これは一度話題になった「0秒思考法」と似ている作業である。これについては下記のブログが参考になる。ブログ筆者は「0秒思考法」を2年間実践している。


今回の筆者のやり方は「内なる言葉を磨く思考サイクル」といわれる3つのステップで、思考をより深める作業である。その3つのステップとは

  1. アウトプットさせる
  2. 拡散させる
  3. 化学反応を起こす 

である。これをやる理由についてはぜひ本書を読んでほしい。より理解が深まるだろう。今回はその具体的な方法を説明する。上記の3つのステップを具体的な7つの手段で行なっていく。

課題設定

はじめるにあたって、まず今自分が最も解決したい課題を考えよう。例えば、「本当にやりたいことは何か?」、「人生のゴールは何か?」、「どんな恋人と付き合うか?」、「どんな仕事に興味があるのか?」、「今の悩みはなにか?」など、とにかくなんでもいい。まずは簡単な課題設定をして取り組むのが一番だろう。

1.アウトプットさせる

 用意するもの以下の2つだけだ。

  • A4サイズの1枚紙(綴じているものはだめ)
  • 太めのマジックペン

この際、ノートのような髪が綴じてあるものはだめだ。理由は3つ。

  1. その全てを机に広げることによって、自分の頭の中を俯瞰してみられるようにするため。 
  2. リズムよく、次々書いていくため(ノートの場合、罫線に沿ってどうしても上から下になってしまう)
  3. 大きな文字で書けるため(文字の大きさは自身の大きさに比例する)  

おすすめは無印良品の再生紙落書き帳だ。100枚92円なので、枚数を気にせず次々と紙に書ける。

用意できたら、設定した課題にそって、内なる言葉をとにかく書き出すことだ。内なる言葉を1ページごとに書く。とにかく書く。それ内なる言葉の解像度をあげることに繋がる。

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例えば、いま新しいことを考えたとしよう。その際、いざ相手に話す、もしくは文章にしようとした時に、うまく言葉にできないことがよくないだろうか?この状況に至る理由は3つである。

  1. 頭がいっぱいになった = よく考えたと誤解してしまう
  2. 思考が進んでいくと、最初に考えたことが忘れてしまう 
  3. 断片的で脈絡もなく、考え散らしていることに気づいていない 

原因がわかれば解決することは容易である。頭の中のあらゆる考えを外に出し、形を与えることで、どれだけ自分が考えているかを把握することができるようになる。一度考えたことを記憶する必要もなくなり、「せっかく考えたのに忘れてしまった」といったこともなくなる。

これが、とにかくA4の紙に内なる言葉を書き出す理由である。とにかく書く。髪がもったいないと思っても書く。その1枚1枚が自分自身であり、自分を知り、内なる言葉を磨いていくことに繋がる。

スペースがない人は、付箋とノートを組み合わせる

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スペースがない場合は、A4用紙の代わりに、付箋を用いて、それをノートに貼っても良い。実際このブログ記事は付箋に書きたいことをまとめ、ノートに貼って書いた。よく文章は書く前に決まる、とは言ったものだが、今回まさにこれを実感した。まず自分の伝えたいことを書き出し、それに文字を装飾することで、いつもよりもスムーズに文章にすることができた。

しかし、内なる言葉を磨くという点において、思いついたことを次々書いていくには、やはりA4ページの方が適している。付箋であればかけるスペースが限られているため、どうしても思ったことを次々と書くのは困難である点に注意が必要である。

2. 拡散させる

A.考えを進める 

ステップ1で書き出された内なる言葉は、これから考えを進めていく、つまり、内なる言葉を磨いていく過程における出発点と考えて良い。そしてこれから、「なぜ?」「それで?」「本当に?」の3つのキーワードで、内なる言葉を拡張し、解像度をあげていく。

やることは、先ほど書き出した1枚1枚の言葉に対して、「なぜ?」「それで?」「本当に?」と問いかけ、言葉を拡張するのである。その時に浮かんだ内なる言葉はしっかりと書き出す。

この状況を図にすると①で得られたことばを中心に「T」の字になるため、筆者は「T字型思考法」と名付けている。では、このそれぞれについて説明する。

1.「なぜ?」: 考えを掘り下げる

なぜそのように考えるのか、内なる言葉が浮かんだのかを自分自身に問いかけることで、思考を深めていく。自分の根本や、思考の源泉、そもそも持っている価値観に迫っていく。「なぜ?」を繰り返すことで、考えを掘り下げ、より抽象度の高く本質的な課題について考えていくことができるようになる。

2.「それで?」:考えを進める

「それで?」の後には「結局何が言いたいの?」「結局何がしたいの?」「結局どんな効果があるの?」と言った言葉が隠れている。そのため、今考えていることが実現されることで、どんな効果を生むのか、どんな効果を得られるのか、果たして意味があるのかを考えることで、思考を前に進めていくことが可能である。

3. 「本当に?」:考えを戻す

自分が考えていることに対して疑問を持つことは、「建前だけで考えていないか?」「それは自分の本音なのか?」「本当に意味があるのか?」について考える布石になるため、一旦冷静になり、考えを戻す効果を持っている。その結果、今まで考えが及んでいなかった違う方向についえ考える余地を生み出すことができるようになる。

例えば、「自分がこれからどのように生きていきたいか」の中で、「仕事で成功したい」という言葉が出てきた場合のT型思考法を行った場合以下のようになる。

まず「なぜ?」で考えを掘り下げると、「やるからには本気でやりたい」「同期には負けたくない」「評価されたい」「昇進したい」と言った言葉がうまれるので、その1つひとつをまた書き出していく。

2の「それで?」で考えを進めていくと、「社会を良くしたい」「クライアントを満足させたい」「社会で評価されたい」となる。

3の「本当に?」で考えを戻してみると、「とはいえ、自分の時間も大事にしたい」「仕事だけじゃなく家庭も大事にしたい」「成功っていうより、いい仕事をしたい」となるだろう。

とにかく大事なのは、T型思考法で、考える幅を広げ、奥行きを深めることにより思考を進め、内なる言葉の語彙力と解像度をあげることである。そのため内なる言葉を書き出し続けよう。今回のステップでは、同じように新しい紙に書き出し続けることだが、ぼくの場合、1つの書き出した内なる言葉に対してT型思考を行い、その紙に浮かんだ言葉を書き出していった。

理由はどうしても紙が多くなることであるけれども、大事なのは内なる言葉を書き出すことであるから、このようにした。

B. 分類する(グルーピング)

次は、Aで広げた考えを整理していく段階である。最初に行うのはいたって単純で、髪を順に見ながら「これは別の考え方をしているな」と思った言葉をいくつかの塊に分けることから始めていく。全ての紙を分類し終えたら、もっとも枚数の多い束、つまり、もっとも考えていた方向の束を手に取り、もう一度分類作業を行う。

分類する、見直すという作業を3回ほど繰り返すと、ほぼ正しくグルーピングできているようになる。1回だけでは全体を俯瞰して見切れていないことが多いため、少なくとも3回は見直すようにしよう。

次は、方向性を意識しながら、その中の順番を入れ替えていく作業である。具体的には、まず分類された塊を髪の枚数が多い順に左から右へと間を空けて置いていく。違う視点によって生まれている内なる言葉を、横に並べるのだ。

次に、それぞれの髪の束を手にして、その中でも近いものをさらに分類しながら、より本心に迫っているものや、確かにそうだなと感じられるものを上から順に並べていく。

これをすることで、自分がどれだけの幅で、どれだけ深く考えているかを把握できるようになる。この縄目を細かくしていくことが、内なる言葉の解像度を高めることにつながるのだ。

同じ仲間をグルーピングする作業は、できるだけ大きな机で行うのが望ましい。会社に勤めている人は会議室を用いるといいだろう。家庭で行う場合は、ダイニングテーブルや床に置いていくのも有効だ。

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ぼくは実際大学の図書館でやったのだが、やはりかなり大きめの机が必要だった。この際、意識高い系に見られているのではないかと恐れず、断固たる決意で作業を進めること求められる。

C. 足りない箇所を埋める

ここまですると、自分の思考にどこが足りないかが見えてくる。そこで行うのは考えの足りない方向性について、つまり、横のラインに意識を向けそれを広げることだ。内なる言葉を書き出して整理してみると、自分のことばかりを考えている人と、相手のことだけを考えている人に二分されることが多い。

例えば、就職や転職活動において、志望理由や、自分の強みを考えているのであれば、どうしても自分をアピールしたい気持ちが先行してしまう。そのため、実際に行ってきた経験や経歴に関する思考に偏りやすい。そうであれば、自分に何ができるかを、会社に社会にどう貢献できるかに結びつけて考えるだけで思考の幅は一気に広がる。

このように客観的に自分の思考を俯瞰することができれば、横のラインを広げることが可能であり、それもしっかり書き出そう。

この次にするべきことは、それぞれの方向性に対して考えを深めていくことである。つまり、縦のラインを意識して考えを深める作業である。これも同じようにT型思考法を用いて、考えを深めればよい。この際、最初に行ったT型思考方と違うのは、最初は一つ一つの内なる言葉に対して、考えを進めていくことだったのに対して、今回はグルーピングされた一つの方向性やコンセプトに沿って考えを深化させるものである。

これもまた、内なる言葉を書き出すことだ。ぼくの場合、グルーピングし、新しくA4の紙にグループ名を書き、その紙にT型思考を行って内なる言葉を書いていった。

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3. 化学反応を起こす

ここまでのステップを行えば、かなり思考が深まったであろう。ここからはさらなる発展として、自分の思考に化学反応を起こしていく。

A. 時間をおいてきちんと寝かせる

いままでのステップで、自分の頭がどのようになっているかを把握できるようになり、視野を広げるようになるもなる。この次に行うのは、何もしないことである。時間をおくのは2〜3日ぐらいが良いとされている。常に1つのことを考えていると、無意識のうちに考えが狭くなってしまったり、冷静な目線を持つことができなくなることがあるからだ。

もう一つに、セレンディピティが起こるのを待つことである。ある一つのことを集中して考えた後、全く別のことをしている時に有益な情報を得たり、ふとした瞬間に答えが浮かんだりすることがある。この求めずして思わぬ発見をする能力のことを「セレンディピティ」と呼ぶ。日本語では「計画的偶然性」と呼ぶ。

これは、日頃から課題意識と行動によって潜在的に情報感度が高くなり、気づく力が強化された状態と言える。つまり、無意識の意識が、目の前で起きる事象に意味を与えるのだ。

これまでのステップを行えば、自分が考えていたテーマに関するアンテナを立てたことにつながり、情報感度が自ずと高くなっていく。そのため、ふとした時に五感から入ってくる情報を元に、瞬間的に問題が解決してしまったり、ひらめきを得ることになる。

これは有名ブロガーのちきりんの言う「思考の棚に置いておく」こととも似ている。

世間では、なにかを見たり聞いたりしたときに、すぐに気の利いた意見が言える人のことを「頭の回転が速い」と言います。周囲の人は、「今得た情報をもとに、こんなに短い時間であんなにおもしろいことを考えつくなんて、頭の回転がとても速い人だ!」と思うのでしょう。しかし、実際にはそれらの人の多くは、その場で考えているわけではありません。 待っていた情報が実際に手に入ったとき、彼らはそれを頭の中の思考の棚にまるで〝ジグソーパズルの最後のピース〟をはめ込むようにポンと放り込んだうえで、「その情報が存在したなら、こういうことが言えるよね」と、すでに考えてあった結論を「思考の棚」から取り出してきているのです。 つまり、それは、彼らの「頭の回転の速さ」を示しているのではなく、「思考自体がすでに完了していた」ことを示しているのです。

B. 真逆を考える。 

十分な時間を置いて寝かせた上で行うべきは、足りない箇所に気づき、作業である。時間を置き、頭が一旦リセットされた状態のため、考えたばかりの時と比べて客観的にヌケモレ気づくことができる。そこで次のステップとして行うのが真逆を考えることである。

いままで行ったのは、あくまでも「自分の常識の範囲内」でしかないのだ。そのため、真逆を考えることで「自分の常識では考えないこと」「考えられなかったこと」へと思いを馳せる。つまり、これは自分の常識や先入観から抜け出すことにつながり、半強制的に別の世界へと考えを広げることなのである。

では、この真逆を考えるとは、どういうことなのだろうか?「真逆=否定」というイメージがあるかもしれないが、それは逆の軸の1部に過ぎない。具体的な真逆の発送法としては、「否定としての真逆」「意味としての真逆」「認証としての真逆」がある。

1. 否定としての真逆

これは「〜でないもの」を見つけてやればいいので非常に簡単である。

(例) 

できる – できない

やりたい – やりたくない

好き – 無関心 – 嫌い

 

2. 意味としての真逆

否定ではなく、相対する意味を持つ方向へと考えを進める。否定を半ごと捉えるならば、意味としての真逆は対義語である。

(例)

やりたい – やらなければならない

希望 – 不安

本音 – 建前

 

3. 人称としての真逆

誰かの視点から物事を考えているのかを広げていく。

私 – 相手 – 第三者 

主観 – 客観

ひとりきり – 大多数

これらを使い、「自分がこれからどのように生きていきたいか」を例にすると以下のような真逆を考えられる。

(例) 

仕事で成功する – 成功ではなく、いい仕事をする

自分磨きを怠らない – 仕事で自分を磨く

同期で一番になる – 同期なんて気にせず、自分と向き合う

ここで、自分の内なる声を書き出すことが目的なのに、なぜ真逆を考える必要があるのか疑問に思った人も多いだろう。自分の意見の真逆を考えることは、つまり、他の自分の意見に対して、他の選択肢も考慮ができているということだ。

「私の意見は〜である」と主張した場合と、「他の選択肢も考慮したが、私は〜だと思う」と主張した場合では説得力が違うのは明らかだ。真逆を考えられると言うことは、この人はしっかりといろんなことを考えた上で発言している、と捉えてもらえることにつながるのである。

C. 違う人の視点から考える

自分の常識や、先入観を疑い真逆を考えることができたならば、様々な人の立場になって考える手段に入る。最後のステップは、特定の誰かを思い浮かべることで、その人になりきって、ある課題や物事をどう考えるかを想定してみることである。

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(出典: https://matome.naver.jp/odai/2147640749333957101/2147640794534442603)

「君の立場になれば君が正しい。僕の立場になれば僕が正しい」 

これはミュージシャンのボブディランが残した言葉であり、自分の視点だけではなく、相手の立場から物事を考える重要性を的確に表現している。

人間関係や恋人との関係を考えているならば、その相手になりきり、相手の中に浮かんでくるであろう内なる言葉を掴み取るようにしてみればいい。また仕事のことならば、自分の上司や部下、同僚、クライアントや取引先の人の視点に立ってみる。この複眼思考を行うことで、自分自身の内なる言葉の中に、自分以外の内なる言葉が追加されることになり、より広く物事を考えられるようになるのだ。

世の中は広く、多くの人が存在している。もちろん、第一に重要なのは自分自身の考えである。そのため、自分自身の頭の中に浮かぶ内なる言葉と向き合い、丁寧に汲み取り、一言一言を1枚に書き出していくしかない。自分のことがある程度把握できるようになってきたら、他者が何を思うのかにまで、想像力を働かせながら、自分の頭の中に取り組んでいくことだ。

長くなったが、これで正しく思考を進ませる具体的な7つのプロセスについての説明を終えたい。本書ではこの後「言葉にするプロセス」について第三章に進む。しかし、筆者はこのプロセスは、中学までの国語で習うレベルであるため、そこまで重要ではないと主張している。なにより重要なのは、内なる言葉に気づき、それを磨くことであるからだ。

もちろん第3章も、本の3分の1を占めるボリュームで、内容はもちろんとてもおもしろい。興味がある人は是非読むことをおすすめする。

ぼくが考えたこと 

国語こそが、我々の祖国

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「人は国に住むのではない、国語に住むのだ。『国語』こそが、我々の『祖国だ』」

 これは、ルーマニアの思想家、エミール・シオランが述べた言葉ですが、ぼくは今回、この1節こそ「言葉」、「国語」の重要性を表しているのだな、と改めて感じさせられました。

この1節は、世界中でたくさんの人気を集めたゲーム「メタルギアソリッド・ファントムペイン」でも用いられています。このメタルギアシリーズの第1作目は、1987年に発売され、世界中のユーザーを魅了し、のちに数々の後継作が登場しました。メタルギアがこれだけ世界で愛される理由の一つが、そのテーマ性にあります。

どの作品もユーザーに伝え、考えてほしいMEME(物語)があり、このシリーズの最新作である「メタルギアソリッド・ファントムペイン」のテーマの一つ、それが「言葉」でした。

本作品に登場する悪役の一人、スカルフェイスは、子供の頃、小さな村に生まれ、なんども戦争に巻き込まれました。彼は、その村の支配者が変わる度に、彼らの言語を教えられ、自分の母国語を話すことを禁じられます。言葉は、性格や、ものの考え、善と悪さえも変えてしまいます。彼は戦争で何もかもを失いました。そのことがきっかけに、世界の共通言語である「英語」を駆除することで、世界を解放しようとする。これがこのゲームのストーリーの一つです。

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英語よりも国語

近年、スキルとしての英語を身につけることが重要視されています。ぼくもまた、プログラミングや英語などのスキルを学んだり、プレゼンやコミュニケーションのテクニック本をよく買っていました。

しかし、どんなスキルを身につけたとしても、例えば英語はコミュニケーションの手段でしかないし、そもそも何を考え、何を述べるかが重要です。英語は手段でしかないとはよく言ったものですが、今回改めてそのことを実感することとなりました。

そう考えると今までやってきたことは、小手先のテクニックばかりだったと、反省するばかりです。日本で生まれ育ったなら、何を考えるにしても日本語で考えます。たとえ英語で会話するとしても、頭の中では日本語で考え、それを英語に変換し、相手に伝えます。

いまやインターネットにある情報は、ほとんどが英語ベースであり、英語が世界共通言語となっています。ネイティブは英語で情報を見聞きし、英語で考えます。しかし、日本人の自分は英語で情報を取得し、それを日本語で考え、発言します。この時点においても、ネイティブに劣るのは明らかです。

では何を磨くべきか。それはもちろん日本語としての国語力であり、その思考を広げるには、語彙力を学ぶべきでしょう。以下はpresident onlineの記事の一部です。

母語はあらゆる知性的・情緒的なイノベーションの培養基である。私は母語によってしか「喉元まで出かかったアイディア」を言葉にすることができない。後天的な努力によって英語で読んだり、書いたり、話したり、場合によっては考えたりすることも可能だが、英語で“創造する”ことはできない。母語を話すときだけ、私たちは「それまで存在しなかった語」や「それまで発音されたことのない音韻」を口にすることが許される。

(一部省略)

母語は話者に思考の自由、アイディアの創造を保証する。だから、母語が国際語である人々はその時点ですでに国際競争におけるアドバンテージを握っているのだ。英語が現在国際共通語であるのは、イギリス、アメリカという英語国が20世紀世界の覇権国家だったからである。それにインターネットの共通言語が英語になってしまった。これによってかつては国際共通語として競合していたフランス語、ドイツ語はその地位を失った。

(引用: http://president.jp/articles/-/9666?page=2)

また国語の語彙力の重要性は以下のようにも言われています。

特に国語とは全ての知的活動の根源である。国語は、思考の結果を表現する手段であるばかりか、国語を用いて思考すると言う側面もあるから、ほとんど思考そのものと言ってよい。これが十分な語彙と共にきづかれていないと、思考が不可能となる。 

(祖国とは国語(新潮文庫)より)

仮に英語がそこまで上手でなくても、大切なのは何をしゃべるかです。喋る内容がしっかりとしたものであれば、少し文法が間違っていたとしても問題ではありません。そこで参考になるのが、ソフトバンク社長の孫さんどインタビュー記事です。

www.youtube.com

彼の英語には、多少の文法的な間違いが指摘されています。しかし、彼の発言の一言一言には、とても説得力があるのを感じさせられます。それは彼が社長であるという事実を知っているからなのもあります。しかし、なにより孫さん自身が、自らの経験に基づいて、意見を発言しているからなのでしょう。選ぶ1つ1つの言葉に重みを感じます。

brighture.jp

言葉を磨くには?

では、どのように言葉を磨くのか。それが今回紹介した本書の内容であり、つまりは、内なる言葉に気づくことです。そして、自分の内なる言葉を書き出し(アウトプット)、思考を深めることが大事なのでしょう。

実際ぼくはこれを実践することで、日々の思考がより深くなったのを感じています。特に、第2章で紹介される「それで?」「なぜ?」「本当に?」と自分に問う、T型思考法を日々行うことで、自分との対話が増え、それはまるでメンターにコーチングされていた時のような感覚が、日常で身についた気がします。

ぼくはタスクをこなす上で、とにかく目の前のことにすぐ手を出す癖がありました。しかし、それでは闇雲に行動しているだけで、「仕事をしている気でいた自分」がいました。大事なのは「どんな選択肢の中で、それを選択し、それを行うことで、どんな結果が期待されるか」。これをを考えることでした。

これは、急に身につくことではないでしょう。おそらく筋トレと同じようなもので、日々の生活で「なぜ?」にこだわり、どんなことにも疑問を持って行動することが、1番の近道だと思います。

そしてこの思考をより深く、広くするには、語彙力、つまり国語を鍛えることです。語彙力を鍛え、表現の幅が広がることができるというのはつまり、他の表現との違いを理解していることです。違いを理解できるということは、他の選択肢を考慮できていることに繋がり、これが思考の深さに繋がります。

この思考を鍛えるのが、今回紹介した思考サイクルと呼ばれるものです。しかし、思考を鍛えるのはこれに限ったものではないと思います。大事なのは、内なる言葉に気づき、それをアウトプットすることです。

それはブログで自分の意見を書くことや、Twitterで日々自分が思ったことを発信することも一つでしょう。それはホリエモンこと堀江貴文さんが、近畿大学の演説でも述べていることでした。

自分で出来るだけ多くの情報に接することがまず大事です。そのためのツールは揃っている。別に先生に教わらなくても、自分で、たとえばスマートフォンのニュースアプリを使って情報に接することも出来るし、ソーシャルネットワークを使って、世界中の、自分が「面白いな」「この人の話聞いてみたいな」っていう人たちの情報にすぐに辿りつくことができます。簡単です。まず、自分で情報をーー世界中の素晴らしい頭のいい人たち、先を行ってる人たちの情報をーー、触れることができるので、まず、そのことを頭の中に入れておいてください。

そして、それだけじゃダメです。これからは、そうやって仕入れた情報を、自分の頭で考えて、そして自分で発信して、頭の中を整理して自分で考える癖をつけていかなければいけないです。それはどうやってやるのか?簡単です。インターネットでブログやら、ソーシャルネットワークやら、そこで毎日発信し続ければいい。非常に簡単なことです。それをできれば毎日やってほしい。そうすることによって、世界中の様々な情報を自分で頭の中に入れて考えて自分なりの判断ができるようになると思います。(引用 :堀江貴文さんの近畿大卒業式スピーチ 全文書き起こし - 単純に狩り)

誰かの言っていた知識を鵜呑みにするのではなく、たくさんの情報にふれ疑心暗技になりながら、自分の意見を作り、それを言葉にすること。そんなことが本当に大事なんだと、強く感じました。日々精進していきたいです。